寿司女とバナナ男

日韓米のカルチャーもやもや

火山はすごい 千年ぶりの「大地変動の時代」

 

火山はすごい (PHP文庫)

火山はすごい (PHP文庫)

 

著者からの献本が勤め先に届いていたので、読んでみた。

本書は、2002年の同著の内容を大幅に加筆した改訂版。阿蘇山、富士山、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島の噴火についてのほか、その後に起きた東日本大震災や御嶽山の噴火について、火山のしくみや噴火予知・火山学の手法の紹介を交えながら著者の体験をもとに語られる。

 

火山の噴火は、少なくともまだ現在の火山学では完全に予測できない。ときに噴火で多くの死者が出る。そこに理由も必然性もへったくれもあったものじゃなく、その時間にその場にたまたま居合わせた人がほんとうにただ偶然に亡くなる、あまりの人間のちっぽけさを、私もそうだが、昨年の御嶽山の噴火で少なからぬ人が改めて思い知っただろう。

一方で、噴火でおこる「岩なだれ」が海に注いで新しい島々をつくりあげたり、マグマによってできた新しい山が観光資源となったり(昭和新山など)、マグマの熱によって温泉が湧き出たりと、火山は多くの恵みを人間にもたらす。それを享受してきたのが日本列島に生きる人々というわけである。

 

著者は、過去から未来をとくヒントがあるといいながら、科学には限界があるとも言う。知識は必要だが、その知識に全面的に頼ってはいけないとも説く。この辺りは少し、ダブルスタンダードと感じる人もいるのかもしれない。有珠山のようにある程度成功したケースもあるとはいえ、噴火予知なんてちっともできてないじゃないかと、火山学者に罪悪感を期待する人もいるのかもしれない。そのような意地悪な考えには耳を貸さず、研究に邁進してほしいと願う。予知の研究成果は、例えば御嶽山の噴火後に、自衛隊や消防隊の安全な活動時間を確保するうえで役立っていることなどは本書にあげられているとおりだ。

 

著者の一般への熱心な啓蒙活動にはいつも頭が下がる思いである。文章も平易で読みやすい。古文書をひもといて何万年単位で語られる火山のストーリー、山頂が陥没してできる巨大なカルデラのでき方、海をも走る火砕流・・・ダイナミックで壮大なエピソードが満載で、恐ろしくも美しい火山を誰しもが味わうことができる1冊であろう。